大学院で借りていた大学院第一種奨学金 2,112,000 円が、全額免除になった。
大学院では、保護者の家計状況に関係なく、無利子の第一種奨学金を借りることができる。さらに、学業成績によっては、奨学金の半額または全額が免除される「特に優れた業績による返還免除制度」が存在する。
この制度は、無利子で奨学金を借りられるうえ、条件を満たせば返済が不要になる、非常に魅力的な仕組みだ。
大学院で奨学金を利用し、免除を目指している学生は多いと思う。
本記事では、そうした方々の参考になればと思い、私の体験談を共有する。

こんにちは、前原賢です。ガジェットや暮らしの知恵などの情報発信をしています。Twitterやってます。
大学院第一種奨学金について
大学院の奨学金は3種
- 第一種奨学金(無利子)
- 第二種奨学金(有利子)
- 入学時特別増額貸与奨学金 (有利子)
これらの奨学金のうち、「特に優れた業績による返還免除制度」の対象になるのは1.第一種奨学金のみとなる。
大学院第一種奨学金の選考基準
- 人物基準...学生生活における行動の全般を通じて、意志が固く、責任感が強く、中正妥当な性格で、特に研究心が旺盛なこと。
- 学力基準...将来、研究能力または高度の専門性を要する職業等に必要な高度の能力を備えて活動することができると認められること。
- 家計基準...本人の給与収入が299万円以下(配偶者に収入がある場合はまた別)であること。
この中でも3.家計基準が学部の奨学金と異なっており、大学院の奨学金では保護者の家計状況に関係なく奨学金を借りることが可能である。
特に優れた業績による返還免除制度
大学院第一種奨学金には返還免除制度が存在し、大学院時代の成績を考慮して借りていた奨学金の半分または全ての返還が免除される制度が存在する。
日本学生支援機構のサイトでは以下のように説明されている。
『大学院で第一種奨学金の貸与を受けた学生であって、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者として日本学生支援機構が認定した人を対象に、その奨学金の全額または半額を返還免除する制度です。
学問分野での顕著な成果や発明・発見のほか、専攻分野に関する文化・芸術・スポーツにおけるめざましい活躍、ボランティア等での顕著な社会貢献等も含めて評価し、学生の学修へのインセンティブ向上を目的としています。
貸与終了時に大学に申請し、大学長から推薦された人を対象として、本機構の業績優秀者奨学金返還免除認定委員会の審議を経て決定されます。』
2024年は貸与終了者19,011名のうち、4,403名が半額免除、1,304名が全額免除となっている。
成績が一定基準を満たしており収入が299万円を下回っていれば奨学金を無利子で借りることができ、大学院時代の頑張り次第で奨学金の返済が免除される可能性があるため、非常に有意義な制度である。
奨学金全額免除を勝ち取る方法
全額免除を勝ち取る方法...それは...一概に「これだ!」と断言することはできない。
というのも、奨学金が免除になる選考の殆どは学校単位で行われるためである。
そして、免除の基準は学校ごとに異なるため、その学校ごとに免除を勝ち取るための戦略が変わってくる。しかも、学内の選考基準は公にされていないことが多く、何に力をいれればいいかもわからないことが多い。
そのため、奨学金全額免除を勝ち取る明確な方法は存在しない。
しかし、奨学金免除のおおまかな評価基準は公表されているので、それに従うことで免除に近づくことができる。
ここからは奨学金全額免除者の体験談の一例として免除に至るプロセスを述べる。
業績の評価基準
大学院第一種奨学金の免除は大学院で優れた業績を挙げたものが対象となる。では、業績として評価されるものはなにか。
日本学生支援機構によると業績として評価される項目は11項目存在する。(特に優れた業績と評価方法)
その中でも、自分が重点をおいた項目を示す。
- 学位論文その他研究論文
- 大学院設置基準第16条第1項に定める特定の課題についての研究の成果
- 著書、データベースその他の著作物
- 授業科目の成績
この4点は修士論文・授業・学会発表・論文執筆に関係する項目である。大学院での活動の中心であるため、配点も自ずと大きくなると考えこの4項目に重点をおいた。実際にこの4点に力を入れて全額免除まで行ったので、この方針は間違っていないと思う。
修士時代の過ごし方
大学院では奨学金免除のためにも、研究・授業に真剣に取り組んだ。
授業は通常より多く単位を習得し、友人と勉強会を行いテストに挑んだ。
土日も研究室に行き実験を行い、学会や論文のためのデータの取得を行った。
奨学金返還免除の申請
弊学では奨学金免除の申請は修士2年の12月中頃に行われた。
この申請が中々大変で、過去に出た学会の表紙・プログラム・アブストラクトをコピーして提出することが必要となった。過去の学会の予稿を保存していなかったので、予稿集めと様式に従った資料の作成に2日も要してしまった。
ナニワトモアレ、修士2年12月時点での業績は以下のようになった。
- 修士論文 1本
- GPA 3.7
- 取得単位数 60単位
- 研究論文 第一著者...1本、共著...3本
- 学会発表 国際...6件、国内...1件
- 学会発表(共著) 13件
こう見ると自分でも頑張ったほうだと思う。チームで研究していたので、論文や学会の共著に入ることも多く業績数は多くなった。
申請を出したら後は結果を待つのみ。これ以上はどうにもできないので天に全額免除が貰えることを祈った。(半免と全免でも100万の差があるとか心臓に悪い)
実は12月時点で査読に出していた論文が一本あったのだが、3月までに出版されなければ審査対象にならないとのことで、泣く泣く申請を取り下げた。読者の皆様は自分のようにならないように12月時点で出版の目処が立つようにように論文を仕上げてほしい。
奨学金返還免除の認定
奨学金返還免除の認定は大学院卒業後、社会人1年目の6月にされた。
6月に日本学生支援機構のホームページで奨学金が返済完了の表示になり、7月頃書面で全額免除の認定証が届いた。
思い返すと、奨学金のおかげで研究に打ち込むことができたし、返還免除制度があるおかげで研究のモチベーションになった。今はエンジニアとして働いているが、研究室で頑張った経験は確実に生きている。日本学生支援機構には感謝の思いしかない。
まとめ
奨学金の全額免除を確実に得る「これだ!」という方法は存在しない。
しかし、大学院生として研究・授業に真剣に取り組むことが重要である。
論文執筆も学会発表も研究に打ち込んでいなければできない。また、大学院の授業成績の一部は担当教員の評価によって決まるため、やはり研究に打ち込むことは大切である。
さらに、環境的な要因も大きく影響する。私が所属していた研究室は研究内容が魅力的で、研究に打ち込むことが楽しかったこと。歴代の先輩に奨学金免除者が多くおり、ノウハウが蓄積されていたこと。教授の方針で、国際学会や論文執筆を後押ししてくれたこと。いろんな要因が重なり合って奨学金全額免除に有利な方向に進んだ。
結論として、奨学金全額免除を受けられたのは、「努力・運・環境」の三要素が揃っていたからだと考えている。
現在、奨学金を借りている、あるいは借りようとしている大学院生の皆様の参考になれば嬉しい。